「こころのパン」について〜トルコ地震被災者への支援〜

                                   中浜 慶和(AICAT Hiroshima副代表理事)

 昨年11月イスタンブールでドイツのフリードリッヒ・エベルト財団主催の国際危機管理セミナーにメキシコ,アメリカ,ドイツの代表と共に参加し,12日に発表を終えたわたしはトルコ2度目の地震(M7.2)に遭遇した。神戸生まれ神戸育ち、家族ともども阪神・淡路大震災の被災者であったわたしが9千km彼方のトルコで、ホテルの柱と天井から吊るされた5本のランプが一方向にゆったりと揺れる「地震を見る」ことになろうとは。深夜テレビはアパートが崩壊し、シーツで覆われ横たわっている父親の前で両手を胸に当てて泣いている少女を映していた。わたしは少女と共に泣きながら,阪神・淡路大震災と同じではないかという無力感と同時に胸を突き上げる思いを合わせて感じていた。
 復興が進まない被災地トルコ語のできないわたしにできることは芸術を通して被災者に慰め,勇気そして希望を与えられたらという思いであった。帰国後セミナーの資料を翻訳してくれたAICAT賛助会員であるイナン・オネルさん(東京大学大学院生、日本語読書き堪能)と共に現地に打診を重ねつつ,来年秋5つの大都市で「こころのパン」巡回展を開き2年後には震災メモリアルホールを建設,恒久展示を行うという大きなプロジェクトになろうとしている。5月に現地からプレ・イグジビションとして被災地の一つデイルメンデレに日本の近代絵画出品要請を急遽受け,わたしたちは幸運にも最も活躍中の11人の作家から快諾を頂き、7月の開催にこぎつけた。
 現地でわたしの目を射たものは1年経った今も多くの崩壊した無人のアパートやマンションが取り壊され撤去されることなく,被災者の住む仮設住宅やテントの傍に黒々と威圧するその凄まじい姿であった。無残な建物は失われた肉親や友人そして財産を生々しく思い出させこころの病は確実に深沈していく。「こころのパン」と題したプロジェクトを来年秋に実現化しなければならない。わたしのこの願いは単なる思いつきではない。大正12年関東大震災のときにベルギーの画家たちが134点もの作品を東京で販売、市民の震災復興に寄付したこと、阪神・淡路大震災でもベルギーの一市民が神戸市民のためにアントワープ聖母大聖堂にある14世紀の有名な聖母子像の複製を贈ってくれたことから,今度はわたしたちがトルコに恩返しをする番ではないかと思っている。市民による草の根の交流は海を越えてつながっていくべきだ。
 彫刻家や画家の方々への要請,搬送や梱包,航空輸送,保険,ライブペインティング計画,英語トルコ語のカタログ作成,広報,協賛依頼など渉外、助成団体申請,現地での支援。様々な物心両面からの活動が求められます。みなさまの支援を願っております。さらなる詳細は後報と致しますが、資金的援助をしていただける方々(企業,団体)はAICATの口座に「トルコ支援」とご記入の上,お力添えをいただければ大きな喜びです。
「友よ,美しい日々を願い,慰めと慈しみを分かち合うすべての試みは聖なるものです。日本の兄弟が一万km遠くから差し延べてくれているその手に感謝を込めてキスをします」(7月の「こころのパン」会場に備えられたノートに記されたネシェット・ビシャロール教授からのメッセージ)

関係者と中浜副代表理事 作品2
プレエグジビジョン会場前にて関係者と中浜副代表理事(後列中央) プレエグジビジョン会場に展示された寄贈作品.